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Suis-je ce que mon passé a fait de moi ?

pivot_table について

久しぶりの更新です。
きっかけは覚えていないのですが、夏季休業中にふと Systems Biology の勉強をしようと決意しまして、最近はもっぱら Systems Biology を勉強しています。それに加えて Python や僕の本業の腫瘍学を勉強しています。有機化学も復習しようと思っていたのですが、少しきついなと思ったので、秋学期の後半にまとめてやろうかな考えています。

Systems Biology についてですが、普段からよくチェックしている MIT の OCW に良い感じのセットがあったので、それに沿って勉強しています。まだミクロなスケールについて勉強している途中ですが、僕の興味はマクロなスケールよりもミクロなスケールの方に向いているので、ミクロなスケールの内容を終えたら Systems Biology の勉強は一度中断する予定です。余談ですが、日本語で書かれた教科書としては Uri Alon の「システム生物学入門」が一番良く知られていると思います。

ocw.mit.edu

システム生物学入門 -生物回路の設計原理-

システム生物学入門 -生物回路の設計原理-

また、Poincaré-Berdixson の定理などの非線形分野の知識もところどころ要求されるため、Ch.7 までですがストロガッツも読みました。

ストロガッツ 非線形ダイナミクスとカオス

ストロガッツ 非線形ダイナミクスとカオス

ミクロなスケールにおける Systems Biology に関しては、一通り勉強して自分の言葉に咀嚼してからまとめようと思ってます(不慣れな単語や概念が多いので少し苦労しています)。

話が逸れました、Python に関してです。
同期の友人からバイオインフォマティクス向けの Python に関する情報を教えてもらったことがきっかけで Python の勉強をスタートしました。先ほど触れた MIT の OCW にある Systems Biology のコースにしても、そのほかいろいろな場所においても "Python" という単語を前々から目にする機会は多かったので、良い機会だと思い勉強することにしました。教科書としては、Wes Mckinnney の 「Python によるデータ分析入門ー Numpy、pandas を使ったデータ処理」を使っています。この教科書は Python 2 系統を採用しているのですが、僕は Python 3.4 を使用しているので、時々コードをそのまま入力してもエラーを吐き出されることがあります。そのような場合に僕が見つけた対処法などをメモしておこうかなと思ってます。まだ初心者ですので、アドバイスや間違っているぞなどの指摘は大歓迎です。

Pythonによるデータ分析入門 ―NumPy、pandasを使ったデータ処理

Pythonによるデータ分析入門 ―NumPy、pandasを使ったデータ処理

さて、ここからが本題です。p30 の中段において、ある映画についての性別・年齢ごとの平均評価を出す際に data 表に対して pivot_table を使用する旨が書いてあり、教科書ではそれを実行するために

mean_ratings = data.pivot_table('rating', rows='title', cols='gender', aggfunc='mean')

というコードが記載されています。ところが、僕の環境でこのコードを実行するとエラーを吐き出されてしまいます。そこでいろいろ調べたところ、どうやら rows や cols などが Python 3.4 ではダメらしく、

mean_ratings = data.pivot_table('rating', index=['title'], columns=['gender'], aggfunc='mean')

とすることでエラーを吐き出されなくなりました。rows → index はまだしも cols → columns という変更が僕にはイマイチよくわからないのですがね。まあ仕方ないですね。

16S rRNA遺伝子の水平伝播

大学の電子ジャーナルを活用すると数多くの電子雑誌が読めることに気付いたので, 最近はいろいろと読みあさっています. もともと論文とかを読むのに高頻度で利用していましたが, 電子雑誌を読むという発想には至りませんでした.

化学と生物 2015年 02 月号 [雑誌]

化学と生物 2015年 02 月号 [雑誌]

 

数学や物理学が好きで, 毎月数学セミナーや数理科学などは購入していたのですが, なぜか自分の専門分野の雑誌は買ってなかったんですよね. 家族がNewtonを定期購読していて, もちろん僕も読んでいたので, その影響で数学や物理学の雑誌を買うことの心理的ハードルが低かったからかもしれません. ちなみに数学セミナーの今月号は小平先生特集でした. 

数学セミナー 2015年 03 月号 [雑誌]

数学セミナー 2015年 03 月号 [雑誌]

 

 

数理科学 2015年 03 月号 [雑誌]

数理科学 2015年 03 月号 [雑誌]

 

 

今日は最初に紹介した化学と生物の2015年2月号のある記事について. 

 

16S rRNAは, proteinの翻訳という重要な機能を持つリボソームのパーツなので分子進化速度が極めて遅いであろうことと, 水平伝播はしないであろうことを仮定して微生物の系統分類に利用されてきたのですが, 近年実は水平伝播をしているのではないかという事例が数多く報告されているようです. 僕も微生物学の講義で似たような話を聞いたのでなんとなくそういうものだと覚えてました. この記事によると, リボソーム成分の異種間和合性は従来考えられていたよりもはるかに高いそうです. さらに, rRNAオペロンを欠失させた大腸菌 Escherichia coli KT101株*1を用いた実験によると, その大腸菌の生育を相補した異種16S rRNAは, 配列は多種多様であるものの二次構造は壊さないものであったらしい. つまり, 人工的な環境においてですが, 点変異よりも水平伝播の方が許容されやすいことを示唆していると言えます. このあたりは"非常に興味深い"と書いてあるのでまぁつまりはまだ詳しいメカニズムなどは明らかにはなっていないということのようです. 

 

さらにこの記事によると, 水平伝播の遺伝学的なメカニズムはいまだ全く未解明だそうですが, 水平伝播を阻むような「壁」については報告されているようです*2. つまり, 16S rRNAのhelix 41がペリプラズム酵素RNaseIの特異的なインヒビターとなっており, 16S rRNAの配列が異種のものと置きかわると細胞内RNAがRNaseIにより切断されるそうです. 換言すると, 水平伝播により生存に不利な状況も生じます. 

 

とても興味深いことを示唆しているように感じたので忘備録を残した次第です. しかしこういう事実が出てくると微生物の系統分類についていろいろと思うことはありますね.

*1:T. Asai, et al., "An Escherichia coli strain with all chromosomal rRNA operons inactivated: Complete exchange of rRNA genes between bacteria", Proc Natl Acad Sci USA, 96, 1971-1976, 1999.

*2:K. Kitahara, et al., "Specific inhibition of bacterial RNase T2 by helix 41 of 16S ribosomal RNA", Nature Commun., 2, 549, 2011.

Principles of Pharmacology (PoP) 3rd ed. について

 

Principles of Pharmacology: The Pathophysiologic Basis of Drug Therapy

Principles of Pharmacology: The Pathophysiologic Basis of Drug Therapy

 

 

B3の講義の参考書として指定されていたので買いました. もともと大学入学前から薬理学には強い興味を持っていたので楽しみです. 薬理学に詳しい友人にいろいろと話を聞いてみたところ結構有名な教科書とのことでした. ただ, 日本の現状に即していない部分がある(アメリカの教科書なのでそりゃそうですよね)ので, 他に日本の薬理学の教科書も読んでおくべきとのことでした. いまのところ以下の教科書を考えています. 

 

NEW薬理学 改訂6版

NEW薬理学 改訂6版

 

 

実はこのNEW薬理学の方が講義では教科書に指定されているのですが, いままで原著ばっかし読んできた身としてはいまさら日本語の文献を読む気が湧かないんですよね笑 まあでもどこかで一回読んでおかないといけない宿命にある気がするので読みますけどね. 

 

話をPop3rdの方に戻すと, この教科書についていろいろググってみたところMITのOpenCourseWare*1のあるGraduate levelのコースの一つの指定教科書だったことがわかりました. 


Principles of Pharmacology | Health Sciences and Technology | MIT OpenCourseWare

 

指定されているといっても一つ前の版のものなのでそのままそっくり参考にできるというわけではないですが, そのサイトの"Readings"のところに毎週の講義までに?読むべき項目とその内容に関する論文についての記載があるので, しばらくはこの"Reading"のペースで読もうと思います. 

 

さてこの教科書についてですが, パラパラ見た感じではsectionの数がとても多いと感じました. なので, 興味のあるTopicについて掻い摘んで読む, という方法が向いている教科書であるという気がしますね. 以下全sectionです. 太文字を目で追えばだいたいの内容が把握できます. ただ目次を載せるだけなら猿でもできる*2というツッコミは無しで. 

 

Section I

Fundamental Principles of Pharmacology

Ch.1 Drug-Receptor Interactions

Ch.2 Pharmacodynamics

Ch.3 Pharmacokinetics

Ch.4 Drug Metabolism

Ch.5 Drug Toxicity

Ch.6 Pharmacogenomics

 

Section II

Principles of Neuropharmacology

Section IIA

Fundamental Principles of Neuropharmacology

Ch.7 Principles of Cellular Excitability and Electrochemical Transmission

Ch.8 Principles of Nervous System Physiology and Pharmacology

Section IIB

Principles of Autonomic and Peripheral Nervous System Pharmacology

Ch.9 Cholinergic Pharmacology

Ch.10 Adrenergic Pharmacology

Ch.11 Local Anesthetic Pharmacology

Section IIC

Principles of Central Nervous System Pharmacology

Ch.12 Pharmacology of GABAergic and Glutamatergic Neurotransmission

Ch.13 Pharmacology of Dopaminergic Neurotransmission

Ch.14 Pharmacology of Serotonergic and Central Adrenergic Neurotransmission

Ch.15 Pharmacology of Abnormal Electrical Neurotransmission in the Central Nervous System

Ch.16 General Anesthetic Pharmacology

Ch.17 Pharmacology of Analgesia

Ch.18 Pharmacology of Drugs of Abuse

 

Section III

Principles of Cardiovascular Pharmacology

Ch.19 Pharmacology of Cholesterol and Lipoprotein Metabolism

Ch.20 Pharmacology of Volume Regulation

Ch.21 Pharmacology of Vascular Tone

Ch.22 Pharmacology of Hemostasis and Thormbosis

Ch.23 Pharmacology of Cardiac Rhythm

Ch.24 Pharmacology of Cardiac Contractility

Ch.25 Intergrative Cardiovascular Pharmacology: Hypertension, Ischemic Heart Disease, and Heart Failure

 

Section IV

Principles of Endocrine Pharmacology

Ch.26 Pharmacology of the Hypothalamus and Pituitary Gland

Ch.27 Pharmacology of the Thyroid Gland

Ch.28 Pharmacology of the Adrenal Cortex

Ch.29 Pharmacology of Reproduction

Ch.30 Pharmacology of the Endocrine Pancreas and Glucose Homeostasis

Ch.31 Pharmacology of BOne Mineral Homeostasis

 

Section V

Principles of Chemotherapy

Ch.32 Principles of Antimicrobial and Antineoplastic Pharmacology

Ch.33 Pharmacology of Bacterial Infections: DNA Replication, Transcription, and Translation

Ch.34 Pharmacology of Bacterial and Mycobacterial Infections: Cell Wall Synthesis

Ch.35 Pharmacology of Fungal Infections

Ch.36 Pharmacology of Parasitic Infections

Ch.37 Pharmacology of Viral Infections

Ch.38 Pharmacology of Cancer: Genome Synthesis, Stability, and Maintenance

Ch.39 Pharmacology of Cancer: Signal Transduction

Ch.40 Principles of Combination Chemotherapy

 

Section VI

Principles of Inflammation and Immune Pharmacology

Ch.41 Principles of Inflammation and the Immune System

Ch.42 Pharmacology of Eicosanoids

Ch.43 Histamine Pharmacology

Ch.44 Pharmacology of Hematopoiesis and Immunomodulation

Ch.45 Pharmacology of Immunosuppression

Ch.46 Integrative Inflammation Pharmacology: Peptic Ulcer Disease

Ch.47 Integrative Inflammation Pharmacology: Asthma

Ch.48 Integrative Inflammation Pharmacology: Gout

 

Section VII

Fundamentals of Drug Development and Regulation

Ch.49 Drug Discovery and Preclinical Development

Ch.50 Clinical Drug Evaluation and Regulatory Approval

Ch.51 Systematic Detection of Adverse Drug Events

 

Section VIII

Environmental Toxicology

Ch.52 Environmental Toxicology

 

Section IX

Frontiers in Pharmacology

Ch.53 Protein Therapeutics

Ch.54 Drug Delivery Modalities

 

(おまけ)

*1:MIT OpenCourseWare | Free Online Course Materials

*2:無限の猿定理というものが存在します. 動画参照.

Ch.18 : Cell Death

 

Molecular Biology of the Cell

Molecular Biology of the Cell

  • 作者: Bruce Alberts,Alexander Johnson,Julian Lewis,David Morgan,Martin Raff,Keith Roberts,Peter Walter
  • 出版社/メーカー: Garland Science
  • 発売日: 2014/11/20
  • メディア: Kindle
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学部二年生の全過程が終了し春休みに突入しました. まとまった時間が取れそうなので買ったまま埃をかぶっていたMBoC6thを読むことにします. ただ読むだけじゃ面白くないので, 参考論文まで含めていろいろと読んでこのブログにまとめてみようと思いました. というわけでつい最近講義で扱ったApoptosisの章から読み始めます. ちなみにTwitterでは #MBoC6th一人読書会 というハッシュタグをつけて読んでいる過程を垂れ流しているので, もしも同調して読んでみようという方がいましたらこのハッシュタグを積極的に使っていただけると幸いです. 以下ひたすら淡々と.

 

<keywords>

Apoptosis, caspases, extrinsic/intrinsic pathway

 

Apoptosisとは, 細胞膜や細胞小器官などが正常な形態を保ちつつも, 核内のクロマチンが凝縮して細胞全体が萎縮し断片化してApoptosis body (アポトーシス小体) を形成し, 細胞死に至る現象であり, 端的にいうと"細胞の自殺"です. Apoptosisという単語はギシリャ語の"falling off"を意味する単語が由来らしいです. これに対して, 外傷などにより細胞が死ぬことをNecrosisといいます. Apoptosisの場合厳かに自殺するのに対し, Necrosisの場合は悪いものを撒き散らしながら死んでいきます. つまり他人 (他の細胞) に多大なる迷惑をかけます. この教科書によるとNecrosisの性質を持つApoptosisがあるようですが, こちらの仕組みはまだあまりよくわかっていないようです.  

 

Apoptosisという現象は最初に線虫で発見され, このプログラムされた細胞死における遺伝子制御の解明に貢献したことによりイギリスのSydney BrennerとJohn E. Sulston, アメリカのH. Robert Horvitzが2002年にノーベル生理学・医学賞を受賞されました*1

 

Apoptosisはcaspasesを介して働きます. Apoptosisとして知られている経路は2つ存在し, 外因的なextrinsic pathwayと内因的なintrinsic pathwayが知られています. ちなみに他の形態の細胞死の経路が存在するかどうかはいまだわかっていないらしいです. 

 

extrinsic pathwayの発見には日本の米原 伸先生*2と長田 重一先生*3が重要な働き (具体的にはFASやFASL関連の発見) をされました. この経路はFas death receptorにkiller lymphocyteのFas ligandが結合することがきっかけで進行します(下図).

 

f:id:synonym3antonym:20150204221217p:plain

Fas ligandが結合した後, Fas death receptorのサイトゾル側にDISC (death-inducing signaling complex) が形成され, これにより開始caspaseであるcaspase-8が活性化され, このcaspase-8が実行caspaseを活性化し, Apoptosisが実行されます. ちなみにMBoC5thでは開始caspaseとしてcaspase-8とcaspase-10が挙げられていますが, MBoC6thではcaspase-8となっていました. 

 

intrinsic pathwayの発見には日本の辻元 賀英先生*4が重要な働きをされました. この経路ではミトコンドリアが大きな役割を果たしますが, なぜミトコンドリアがApoptosisのintrinsic pathwayにおいて重要な役割を果たしているのかはわかっていないようです. この疑問は細胞内共生説を知っているとなおさら不思議に感じると思います. この経路ではBAXやBAKによってミトコンドリアからcytochrome cが放出されると, このcytochrome cがApaf1 (apoptotic protease activating factor-1) と結合してApoptosomeという7量体を形成し, このApoptosomeの中心にあるCARDによって開始caspaseであるcaspase-9が活性化され, そしてあとはextrinsic pathway同様に実行caspaseを活性化してApoptosisが実行されます.  

 

ここで僕が一つ疑問に思ったこととしては, MBoC6thではBaxやBakの遺伝子領域にBH4ドメインが描かれていないのに, 章末に書かれている参考文献*5ではBH4ドメインが描かれていることです. 気になったので他の教科書も調べてみたところ, MBoC5thでもBH4ドメインが描かれておらず, Voet生化学でもBH4ドメインは描かれていませんでしたが, 図の出処として2000年のreview article*6が書かれていました. よっておそらくつい最近まではBH4ドメインがないものだと思われていたがここ1, 2年の研究により発見されたのだろうと考えました. 詳細を知る方がいたらご教授願いたいです. 

 

ちなみに他にもBH1からBH3ドメインまで存在し, BH1,2はBcl-2ファミリー相互の結合, チャネル形成に関与し, BH3は細胞死促進活性, Bcl-2ファミリー相互の結合に関与し, BH4は細胞死抑制活性に関与します. これらの内容はMBoC6thには載っていません.

 

他にも気になった話としてはMBoC5thではミトコンドリアからcytochrome cが放出されるときにBH123が機能すると書いてありましたが, MBoC6thではeffector Bcl2 family proteinになっていました. 具体的にはBAXやBAKなどが該当します. なので, もしも2014年の論文の図がまちがっているということであればBH1と2と3を持っているBAXやBAKなどは前の版でいうBH123と指しているものが同じであるということになりますが, 間違っていないとするならBH123ではなくBH1234に相当するものとなりますね. あとは, MBoC5thではBH3-only proteinはanti-apoptotic Bcl2 family proteinを阻害するのみでしたが, MBoC6thではそれとともにeffector Bcl2 family proteinsをaggregateする働きもすると書かれていました. BAXやBAKによるcytochrome cの放出の詳しいメカニズムは分かっていない, とMBoC6thには書かれていましたが, 2014年の論文では一つのモデルが提唱されていたので, 興味のある向きは一読されるとよいかもしれない. 

 

IAPs (inhibitors of apoptosis) はcaspaseの制御に関わります. 哺乳類においてIAPとanti-IAPの働きはあまりはっきりしていないらしいのですが, intrinstic pathwayではanti-IAPsであるSMAC/DiabloとOmiがIAPsであるXIAPを阻害することによってApoptosisを促進し, 活性化したXIAPは開始caspaseであるcaspase-9を阻害し, 結果としてApoptosisを阻害します. 

 

BIDはextrinsic pathwayとintrinsic pathwayをつなぐ役割をします. つまり, extrinsic pathwayにおけるcaspase-8により生成したtBIDはBAXやBAKの発現を促進してintrinsic pathwayを活性化させます. 

 

Apoptosisされた細胞は適切に食細胞によって食されなければいけないのですが, 冒頭のApoptosisの定義によりApoptosisを起こした細胞は正常な形態を保っています. それでは食細胞はどうやってApoptosisを起こした細胞と正常な細胞の違いを判断しているのでしょう?実は正常な細胞では内在化しているホスファチジルセリンが, Apoptosisを起こした細胞では外在化し, この外在化したホスファチジルセリンにMFG-E8とアネキシンIが結合し, これを食細胞がインテグリンを介して認識しています. このホスファチジルセリンが外在化するシグナルをeat me signalといいます. 実は正常な細胞でもいくらかホスファチジルセリンが外在化していますが, 正常な細胞はdon't eat me signalを出すことによって食作用を免れているのです. Apoptosisを起こした細胞がどうやってこのdon't eat me signalを不活化させているかはまだわかっていないそうです. 

 

以上読んでいて思った事を並べていきました. いろいろと調べた感じではまだまだこれから発展していく分野だと感じたので, 今後新しく世に出される論文のチェックは必須のようです. 

 

(追記: 2/10/2015)

Many lipophilic inhibitors of cytosolic signal transduction molecules are under development, including drugs that target mediators of apoptosis or inflammation*7.

 

(追記: 2/19/2015)

今年1/31に実業之日本社から出版された「nature科学 系譜の知 バイオ(生命科学)、医学、進化(古生物)」(竹内 薫氏著)においてapoptosisの話題が扱われていました. 購入したわけではないので詳細を読んだわけではありませんが, apoptosisのトピック以外にもいろいろと扱っているなぁという印象をうけたので, 興味がある人は読んでみるといいかもしれません. なお, このシリーズは他にも2種類あるようです. 

 

 

 

*1:今月の話題(2002年 ノーベル賞)

*2:米原研究室|京都大学大学院 生命科学研究科 高次遺伝情報学分野

*3:長田重一研究室|京都大学大学院医学研究科 医学専攻 分子生体統御学講座 医化学分野

*4:大阪大学大学院医学系研究科 遺伝医学講座・遺伝子学

*5:Peter E. Czabotar, et al., "Control of apoptosis by the BCL-2 protein family: implications for physiology and therapy", Nat. Rev. Mol. Cel. Bio., 15, 49-63, 2014. doi: 10.1038/nrm3722, ちなみにこの論文のp50左下に誤植が存在します (cytochr0omeとなっています).

*6:Michael O. Hengartner, "The biochemistry of apoptosis", nature, 407, 770, 2000. doi: 10.1038/35037710

*7:David E. Golan, et al., "Principle of Pharmacology: The Pathophysiologic Basis of Drug Therapy", 3rd revised international ed., Lippincott Williams & Wilkins, p12, 2011. 

Molecular Biology of the Cell (MBoC) 6th ed. について

僕の所属する大学の生協書籍部にMBoC 6th ed.が入荷されていたのでいろいろと見てきました*1. Amazonで検索した際は年明けに発売するとのことだったのでてっきり公式も年明けの発売だと思っていましたがどうやらAmazonが遅いだけのようです. 公式サイト(Garland Science - Publisher of Life Science Textbooks & Multimedia)によると, 11/20までにはどのFormatも発売されていました. 

 

Molecular Biology of the Cell

Molecular Biology of the Cell

  • 作者: Bruce Alberts,Alexander Johnson,Julian Lewis,David Morgan,Martin Raff,Keith Roberts,Peter Walter
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今回も相変わらず重いです. 一つ前のバージョンは, よく「理学部生物科の人が振り回す赤い鈍器」と比喩されたのですが, 来年からは「青い鈍器」という名称がメジャーになりそうです. 

 

Molecular Biology of the Cell 5E

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  • 作者: Bruce Alberts,Alexander Johnson,Julian Lewis,Martin Raff,Keith Roberts,Peter Walter
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鈍器関連でいうと, カンデル神経科学という, これまた有名な鈍器が存在します. そういえば話が少し脱線しますが, カンデルさんといえばアメフラシニューロンを用いた, CREB分子のブロックによる長期記憶形成の阻害の発見で知られています. CREBといえばligandがGPCRsに結合するシグナル伝達経路において, 活性化したPKAによってserineをリン酸化されることで活性化することでも有名です. 

 

Principles of Neural Science, Fifth Edition (Principles of Neural Science (Kandel))

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  • 作者: Eric Kandel,James Schwartz,Thomas Jessell,Steven Siegelbaum,A.J. Hudspeth
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まあ鈍器の話はこのくらいにしておいて.

さて, 第6版では, 全ての章が印刷されています. これはとても嬉しい変更ですね. 僕が大学生になった頃は第5版が出回っていたので, 噂でしか聞いたことがありませんが, 第4版の頃はすべての章が印刷されていたそうです. 


冒険物語としての「細胞の分子生物学」 - 殺シ屋鬼司令

 

昨今の分子細胞生物学の急速な発展を考慮すると, すべての章を印刷できないことはしょうがないことだと思っていました. ところが今回はすべての章が印刷されています. これは驚きですね. 第5版には全部の章を印刷したHardbackがあるのですが, 正直全部の章を印刷したPaperbackも作れたんじゃないかと思ってしまいます笑. HardbackはPaperbackと比べるととても高いので学生にはきついのです笑. ちなみに第5版では25章あったのが第6版では24章になっています. 章が減ったのも驚きです. 以下は第5版と第6版の全章です(赤色は今回名称が新しくなった章). 

 

5ed. Chapter

PART I INTRODUCTION TO THE CELL

1. Cells and Genomes

2. Cell Chemistry and Biosynthesis

3. Proteins

PART II BASIC GENETIC MECHANISMS
4. DNA, Chromosomes, and Genomes

5. DNA Replication, Repair, and Recombination

6. How Cells Read the Genome: From DNA to Protein

7. Control of Gene Expression

PART III METHODS

8. Manipulating Proteins, DNA, and RNA

9. Visualizing Cells

PART IV INTERNAL ORGANIZATION OF THE CELL

10. Menbrane Structure

11. Membrane Transport of Small Molecules and the Electrical Properties of Membranes

12. Intracellular Compartments and Protein Sorting

13. Intracellular Vesicular Traffic

14. Energy Conversion: Mitochondria and Chloroplasts

15. Mechanisms of Cell Communication

16. The Cytoskeleton

17. The Cell Cycle

18. Apoptosis

PART V CELLS IN THEIR SOCIAL CONTEXT

19. Cell Junctions, Cell Adhesion, and the Extracellular Matrix

20. Cancer

(ここからはDVDに収録)

21. Sexual Reproduction: Meiosis, Germ Cells, and Fertilization

22. Development of Multicellular Organisms

23. Specialized Tissues, Stem Cells, and Tissue Renewal

24. Pathogens, Infection, and Innate Immunity

25. The Adaptive Immune System

 

6ed. Chapter

PART I INTRODUCTION TO THE CELL

1. Cells and Genomes

2. Cell Chemistry and Bioenergetics

3. Proteins

PART II BASIC GENETIC MECHANISMS

4. DNA, Chromosomes, and Genomes

5. DNA Replication, Repair, and Recombination

6. How Cells Read the Genome: From DNA to Protein

7. Control of Gene Expression

PART III WAY OF WORKING WITH CELLS

8. Analyzing Cells, Molecules, and Systems

9. Visualizing Cells

PART IV INTERNAL ORGANIZATION OF THE CELL

10. Menbrane Structure

11. Membrane Transport of Small Molecules and the Electrical Properties of Membranes

12. Intracellular Compartments and Protein Sorting

13. Intracellular Membrane Traffic

14. Energy Conversion: Mitochondria and Chloroplasts

15. Cell Signaling

16. The Cytoskeleton

17. The Cell Cycle

18. Cell Death

PART V CELLS IN THEIR SOCIAL CONTEXT

19. Cell Junctions and the Extracellular Matrix

20. Cancer

21. Development of Multicellular Organisms 

22. Stem Cells and Tissue Renewal

23. Pathogens and infection

24. The Innate and Adaptive Immune Systems

 

どうやらPART Vが一番大きく変わったようですね. 一つ前の第5版は2008年の1月に発売されました. 2006年の山中教授のiPS細胞に関する論文*2の発表を受けて, そのあと世界中でiPSの臨床応用研究, またがん遺伝子を用いた懸念を除くための基礎研究が盛んに行われました. そうした研究内容が反映されたりしてPART Vの記載内容が増加したのだと考えられます. あとは新事実などを盛り込んでタイトルのマイナーなチェンジが行われたようです. たとえば18. Cell Deathですが, 元はApoptosisというタイトルでした. 最近, プログラムされた細胞死(Apoptosisに限らない)に関する研究が熱いらしく, それを反映させたのであろうと考えられます. あとは, 当たり前ですが, 最新の研究を反映してそれぞれ少しづつボリュームが増加しています. 例えばですが, 第5版ではシグナル伝達経路の一つであるTGF-βによる経路において, Smad2/3とSmad4がオリゴマーを形成すると書かれており, 何量体になるかが明記されておりませんでしたが*3, 第6版ではしっかりとトリマーと書かれております. 全体としてみると, 章が減ったと言っても第5版の24章と25章が単に統合されただけのようですね. 

 

またビジュアル面についてですが, 第5版にあるほとんどすべての図が刷新されたと感じました. 文字量の増加に伴い図が縮小したように感じられました. こちらも新しい論文の結果が反映されています. 

 

一つ僕が残念に思う点は, どうやら第6版から付属のDVDがなくなってしまったと思われることです*4.  MBoCを勉強するときにDVDに含まれる画像を用いてまとめを作成するので, それがこの第6版からしづらくなると思うと大変残念ですね. 諦めの悪い僕は, どうにか画像が手に入らないかと公式サイトを調べてみたところ, "Instructor Resources"のところに

Art of Molecular Biology of the Cell, Sixth Edition The Images from the book are available in two convinient formats: PowerPoint® and JPEG.

と書いてるのを発見しました. ということは, 誰に頼めば図が手に入りそうかわかりますね?(笑) 

 

 

*1:なお筆者は今回購入しておりません. しばらくタスクが多いのでそれらが終わり次第買って読んでみようと思ってます.追記: 12/2に購入しました.

*2:Takahashi, K., & Yamanaka, S. (2006). Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors. Cell, 126(4), 663–76. doi:10.1016/j.cell.2006.07.024

*3:MBoC5ed.の文章にはトリマーであることを匂わせる文章は存在し, そのまま引用すると"The individual Smads are thought to be trimers"と書かれています.

*4:もしも違っていた場合は僕にそっと教えていただけると一人の大学生が救われます.笑.

LaTeXの仕様について

LaTeXにおいて, タイトルと本文の段差を強調したい時に役立ちそうな設定内容を, 忘備録も兼ねてTogetherでまとめた. 主に僕のツイート内容から構成される.

 

LaTeXでタイトルの頭からTabキー1個分ぐらい本文をずらす方法 - Togetterまとめ

 

普段LaTeXを使う上でこのような設定はなかなかしないものだと思うが, 使いたい時にはまた参考にしたい.