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Suis-je ce que mon passé a fait de moi ?

Molecular Biology of the Cell (MBoC) 6th ed. について

僕の所属する大学の生協書籍部にMBoC 6th ed.が入荷されていたのでいろいろと見てきました*1. Amazonで検索した際は年明けに発売するとのことだったのでてっきり公式も年明けの発売だと思っていましたがどうやらAmazonが遅いだけのようです. 公式サイト(Garland Science - Publisher of Life Science Textbooks & Multimedia)によると, 11/20までにはどのFormatも発売されていました. 

 

Molecular Biology of the Cell

Molecular Biology of the Cell

  • 作者: Bruce Alberts,Alexander Johnson,Julian Lewis,David Morgan,Martin Raff,Keith Roberts,Peter Walter
  • 出版社/メーカー: Garland Science
  • 発売日: 2015/01/12
  • メディア: ペーパーバック
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今回も相変わらず重いです. 一つ前のバージョンは, よく「理学部生物科の人が振り回す赤い鈍器」と比喩されたのですが, 来年からは「青い鈍器」という名称がメジャーになりそうです. 

 

Molecular Biology of the Cell 5E

Molecular Biology of the Cell 5E

  • 作者: Bruce Alberts,Alexander Johnson,Julian Lewis,Martin Raff,Keith Roberts,Peter Walter
  • 出版社/メーカー: Garland Science
  • 発売日: 2008/01/02
  • メディア: ペーパーバック
  • 購入: 1人 クリック: 42回
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鈍器関連でいうと, カンデル神経科学という, これまた有名な鈍器が存在します. そういえば話が少し脱線しますが, カンデルさんといえばアメフラシニューロンを用いた, CREB分子のブロックによる長期記憶形成の阻害の発見で知られています. CREBといえばligandがGPCRsに結合するシグナル伝達経路において, 活性化したPKAによってserineをリン酸化されることで活性化することでも有名です. 

 

Principles of Neural Science, Fifth Edition (Principles of Neural Science (Kandel))

Principles of Neural Science, Fifth Edition (Principles of Neural Science (Kandel))

  • 作者: Eric Kandel,James Schwartz,Thomas Jessell,Steven Siegelbaum,A.J. Hudspeth
  • 出版社/メーカー: McGraw-Hill Professional
  • 発売日: 2012/10/26
  • メディア: ハードカバー
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まあ鈍器の話はこのくらいにしておいて.

さて, 第6版では, 全ての章が印刷されています. これはとても嬉しい変更ですね. 僕が大学生になった頃は第5版が出回っていたので, 噂でしか聞いたことがありませんが, 第4版の頃はすべての章が印刷されていたそうです. 


冒険物語としての「細胞の分子生物学」 - 殺シ屋鬼司令

 

昨今の分子細胞生物学の急速な発展を考慮すると, すべての章を印刷できないことはしょうがないことだと思っていました. ところが今回はすべての章が印刷されています. これは驚きですね. 第5版には全部の章を印刷したHardbackがあるのですが, 正直全部の章を印刷したPaperbackも作れたんじゃないかと思ってしまいます笑. HardbackはPaperbackと比べるととても高いので学生にはきついのです笑. ちなみに第5版では25章あったのが第6版では24章になっています. 章が減ったのも驚きです. 以下は第5版と第6版の全章です(赤色は今回名称が新しくなった章). 

 

5ed. Chapter

PART I INTRODUCTION TO THE CELL

1. Cells and Genomes

2. Cell Chemistry and Biosynthesis

3. Proteins

PART II BASIC GENETIC MECHANISMS
4. DNA, Chromosomes, and Genomes

5. DNA Replication, Repair, and Recombination

6. How Cells Read the Genome: From DNA to Protein

7. Control of Gene Expression

PART III METHODS

8. Manipulating Proteins, DNA, and RNA

9. Visualizing Cells

PART IV INTERNAL ORGANIZATION OF THE CELL

10. Menbrane Structure

11. Membrane Transport of Small Molecules and the Electrical Properties of Membranes

12. Intracellular Compartments and Protein Sorting

13. Intracellular Vesicular Traffic

14. Energy Conversion: Mitochondria and Chloroplasts

15. Mechanisms of Cell Communication

16. The Cytoskeleton

17. The Cell Cycle

18. Apoptosis

PART V CELLS IN THEIR SOCIAL CONTEXT

19. Cell Junctions, Cell Adhesion, and the Extracellular Matrix

20. Cancer

(ここからはDVDに収録)

21. Sexual Reproduction: Meiosis, Germ Cells, and Fertilization

22. Development of Multicellular Organisms

23. Specialized Tissues, Stem Cells, and Tissue Renewal

24. Pathogens, Infection, and Innate Immunity

25. The Adaptive Immune System

 

6ed. Chapter

PART I INTRODUCTION TO THE CELL

1. Cells and Genomes

2. Cell Chemistry and Bioenergetics

3. Proteins

PART II BASIC GENETIC MECHANISMS

4. DNA, Chromosomes, and Genomes

5. DNA Replication, Repair, and Recombination

6. How Cells Read the Genome: From DNA to Protein

7. Control of Gene Expression

PART III WAY OF WORKING WITH CELLS

8. Analyzing Cells, Molecules, and Systems

9. Visualizing Cells

PART IV INTERNAL ORGANIZATION OF THE CELL

10. Menbrane Structure

11. Membrane Transport of Small Molecules and the Electrical Properties of Membranes

12. Intracellular Compartments and Protein Sorting

13. Intracellular Membrane Traffic

14. Energy Conversion: Mitochondria and Chloroplasts

15. Cell Signaling

16. The Cytoskeleton

17. The Cell Cycle

18. Cell Death

PART V CELLS IN THEIR SOCIAL CONTEXT

19. Cell Junctions and the Extracellular Matrix

20. Cancer

21. Development of Multicellular Organisms 

22. Stem Cells and Tissue Renewal

23. Pathogens and infection

24. The Innate and Adaptive Immune Systems

 

どうやらPART Vが一番大きく変わったようですね. 一つ前の第5版は2008年の1月に発売されました. 2006年の山中教授のiPS細胞に関する論文*2の発表を受けて, そのあと世界中でiPSの臨床応用研究, またがん遺伝子を用いた懸念を除くための基礎研究が盛んに行われました. そうした研究内容が反映されたりしてPART Vの記載内容が増加したのだと考えられます. あとは新事実などを盛り込んでタイトルのマイナーなチェンジが行われたようです. たとえば18. Cell Deathですが, 元はApoptosisというタイトルでした. 最近, プログラムされた細胞死(Apoptosisに限らない)に関する研究が熱いらしく, それを反映させたのであろうと考えられます. あとは, 当たり前ですが, 最新の研究を反映してそれぞれ少しづつボリュームが増加しています. 例えばですが, 第5版ではシグナル伝達経路の一つであるTGF-βによる経路において, Smad2/3とSmad4がオリゴマーを形成すると書かれており, 何量体になるかが明記されておりませんでしたが*3, 第6版ではしっかりとトリマーと書かれております. 全体としてみると, 章が減ったと言っても第5版の24章と25章が単に統合されただけのようですね. 

 

またビジュアル面についてですが, 第5版にあるほとんどすべての図が刷新されたと感じました. 文字量の増加に伴い図が縮小したように感じられました. こちらも新しい論文の結果が反映されています. 

 

一つ僕が残念に思う点は, どうやら第6版から付属のDVDがなくなってしまったと思われることです*4.  MBoCを勉強するときにDVDに含まれる画像を用いてまとめを作成するので, それがこの第6版からしづらくなると思うと大変残念ですね. 諦めの悪い僕は, どうにか画像が手に入らないかと公式サイトを調べてみたところ, "Instructor Resources"のところに

Art of Molecular Biology of the Cell, Sixth Edition The Images from the book are available in two convinient formats: PowerPoint® and JPEG.

と書いてるのを発見しました. ということは, 誰に頼めば図が手に入りそうかわかりますね?(笑) 

 

 

*1:なお筆者は今回購入しておりません. しばらくタスクが多いのでそれらが終わり次第買って読んでみようと思ってます.追記: 12/2に購入しました.

*2:Takahashi, K., & Yamanaka, S. (2006). Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors. Cell, 126(4), 663–76. doi:10.1016/j.cell.2006.07.024

*3:MBoC5ed.の文章にはトリマーであることを匂わせる文章は存在し, そのまま引用すると"The individual Smads are thought to be trimers"と書かれています.

*4:もしも違っていた場合は僕にそっと教えていただけると一人の大学生が救われます.笑.